コンクリート3Dプリンタで宿泊施設を国内初 “印刷”

會澤高圧、太陽の森ディマシオ美術館内にグランピング施設3棟

施主との対話で想いをカタチにかえるc3dp設計施工を本格スタート

自由な造形と繊細なテクスチャーで高いデザイン性を追求

 

會澤高圧コンクリート株式会社(本社苫小牧市、代表取締役社長:會澤 祥弘)は、アームロボット式のコンクリート3Dプリンタ(c3dp)を用いてデザイン性の高い建築物や造形物を施主との対話を通じて設計施工するc3dp事業を本格的にスタートさせました。型枠を用いずにRの効いた形状や複雑なテクスチャーを高速で積層造形し、施主の想いを唯一無二のカタチにかえて建築の価値を最大限に引き出す手法を採用します。第一弾として、北海道新冠町の太陽の森ディマシオ美術館に併設するグランピング施設の建築を受注、本日、グランドオープンを迎えました。宿泊施設がc3dpで“印刷”されたのは国内では初のケースとなります。

c3dpで“印刷”された宿泊施設。夜にはライトアップされ、昼間とは違った表情の陰影を見せる。

 太陽の森ディマシオ美術館は、現代フランス作家のジェラール・ディマシオ氏が描いた世界最大の油彩画(高さ9m、幅27m)を中心に、200点以上の幻想的なディマシオ作品を収める美術館。来館者数の増加を図る狙いから敷地内にグランピング施設を併設する構想が持ち上がり、美術館の谷本勲理事長を中心に地元の株式会社新冠開発共同企業体(本社新冠町 代表取締役社長:廣島 貴史)が母体となって「GLAMPING VILLAGE 紅葉の里」の施設整備を進めることになりました。

ジェラール・ディマシオ氏の描いた世界最大の油彩画

 幻想絵画の鬼才であるディマシオ氏の世界観を通常の建築手法では表現しきれないとして、自由な造形が可能な私たちのc3dpに白羽の矢が立ち、コンセプトをめぐる対話を通じて、デザインの擦り合わせ、テストプリントを何度も繰り返した結果、美術館にふさわしい意匠性に優れ、耐久性も高い建築が可能になると判断し、本採用に至りました。

北海道日高の雄大な山脈とサラブレッドの牧場に囲まれた大自然の中に位置するディマシオ美術館のグランピングのコンセプトは「自然・宇宙・アートとの共生」。元々は5棟だった計画のうち3棟の建設を先行させることになりました。

「自然との共生」をテーマにした「nitay」(ニタイ:森の意)は、大地をモチーフに重厚感を意識して印刷。「宇宙との共生」をテーマにした「sinta」(シンタ:ゆりかごの意)には古代神話の宇宙観を示す卵形を採用しました。「アートとの共生」をテーマにした「nonno」(ノンノ:花の意)は縄文から続く菱型などの植物文様をモチーフに、アール・デコ調の幾何学的なテクスチャーを採用しました。デッサンや3Dデータなどで私たちが提示したデザイン案をたたき台に、テストプリントの質感を施主と共有してイメージを合わせながら、ほかにはない形状や凹凸感を実現させました。

「自然との共生」をテーマにした「nitay」(ニタイ)

 

 「宇宙との共生」をテーマにした「sinta」(シンタ)

 

 「アートとの共生」をテーマにした「nonno」(ノンノ)

 宿泊棟本体は建設現場にアームロボットを持ち込み、基礎の上に直接印刷を行うオンサイトプリンティングを採用しました。建物の高さは2.6mで、床面積は9.8㎡。各宿泊棟は5~6枚のパーツで構成されており、準備や調整をふくめて1日1~2枚ずつ印刷しました。

工程や機材繰りの関係からオンサイトプリンティングの開始は2022年1月の厳冬期に当たりました。真冬には氷点下20度以下まで冷え込む厳しい環境であるため、建設当初は材料の硬化が遅くなり、積層が崩れてしまうという問題も発生しましたが、仮囲いを使った適切な温度管理などで冬季施工を乗り切りました。2層の中空層を持つ宿泊棟の外装は型枠代わりに使用し、外側の層にはコンクリートを充填して配筋を施した鉄筋コンクリート造の構造体をつくり、内側の層には断熱材を充填しました。

プリントを行っている様子

 一方、宿泊棟の周囲を囲う塀は高さ1.2m、直径がおよそ12m。工場で連続的に印刷した12枚のパーツをプレキャスト部材として現場に運び込み、模様がひと続きになるように組み合わせました。工場で次々とパーツを印刷するほうがロボットの準備や調整の時間を短縮でき、オンサイトプリンティングに比べて工期をより短縮できるためです。

私たちのc3dpの歩みは2018年にオランダのCyBe Constructionと技術提携したことから始まり、これまでウポポイ(民族共生象徴空間)の外構ベンチの納入や公衆トイレの印刷、PC建築と組み合わせた立体レリーフなどの造形を手掛けてきましたが、宿泊を伴う住空間を印刷したのは今回が初めてとなります。

c3dpを用いたスピード施工によって省人化と工期短縮を期待するのはもちろんですが、c3dpだからこそ実現できる特殊な形状やテクスチャーを発注者との対話を通じて生み出し、新しい建設の価値を創造して行く考えです。

 

■太陽の森ディマシオ美術館について

2010年8月、北海道新冠町太陽にオープンした美術館。2008年に廃校となった「旧・太陽小学校」を再利用して作られた。ロンドン在住の画家であるジェラール・ディマシオの代表作を200点以上展示している。なかでも高さ9m、幅27mに及ぶ油彩画は代表作。ディマシオによる芸術作品のほかにもガラス芸術家ルネ・ラリックの作品を展示する「ガラスの美術館」など、「自然との共生」、「自然とアートとの融合」をコンセプトに数多くの作品を所蔵している。

太陽の森ディマシオ美術館Webサイト: https://dimaccio-museum.jp/

 

■會澤高圧コンクリートについて

1935年、北海道で創業の総合コンクリートメーカー。本社は苫小牧市。Innovate・Challenge・Trust の理念のもと、コンクリートマテリアルと先端テクノロジーを掛け算し、新たな企業価値の創造に取り組んでいる。バクテリアの代謝機能を活用してひび割れを自ら修復する自己治癒コンクリート(Basilisk)やコンクリート 3Dプリンタなどの新機軸を MITやTuDelft等の欧米トップ大学との産学協力をテコに多数打ち出し、伝統的な素材産業からスマートマテリアルを基軸とするイノベーション・マーケティング集団へと転換を図る。2022年3月期の売上高は203億円。

c3dp専用Webサイト: https://www.aizawa-c3dp.com/

 

 

 

 

 

 

本プレスリリースの問合せ先:

■會澤高圧コンクリート株式会社

生産科学本部:東 大智 080-2863-4236

 

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